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NO TITLE   ひびき様

「歩、今日家行ってもええ?」
昼休みに秋本はそう言って廊下の窓から顔を出した。
席替えで今後ろの席にいる来菅が「またかよ」と小さく呟き席を立つ。
ぼくも「またかよ」と目の前でへらへら笑う秋本に言ってため息をつく。
「またって、そんな頻繁には通ってないやんか」
「うそつけ!このまえ来たのいつだよ」
「え?えー…おととい?」
「頻繁じゃんか」
さようなら、とぼくが窓を閉めると、秋本は3年間サッカー部で鍛えたその腕力で(サッカー に腕力が関係あるのかと聞かれれば悩むところだが)こともなげに閉じる窓を阻止する。
「…」
むかつく。ぼくは諦めて窓から手を離した。
むかつく。こうやって、中学生も終わるこの時期に、まだこんなにも体格に差があることがむ かつく。ぼくは無言で秋本をにらむ。へらへら笑う秋本を、この3階の教室から突き落として しまえたらどんなにすっきりするだろうか。もちろん、そんなことで犯罪者にはなりたくない のでやろうとは思わないけど。
「なんや、痴話げんか?」
高原がやってきて、ぼくたちの顔を見比べて笑う。
「違うよ!」
ぼくは慌てて否定した。いくら好きな相手だからって高原、最近森口に感化されすぎなんじゃ ないのだろうか。そんなぼくを見て何が面白いのか秋本まで笑う。最近高原も身長が伸びた。 170はゆうに超えただろう。ぼくはまだ、161cm。…ほんとうにどうにかしてほしい。
「ま、そんなわけで今日は部活終わるまで待っててな、ハニー」
「誰がハニーだよ。てか、部活引退したんだろ?」
「んーなんやそのはずやったけど、顧問がしつこくてなぁ…」
あまり部活に出てなかった割には秋本はサッカーが上手い。蓮田とツートップを組んで、引退 試合でも大金星をあげたらしい。そうやって、何もかもそつなくこなしてしまうところもむか つく。
「蓮田と今日も後輩の面倒みなあかんのや。せやから歩、すぐ終わるから待っててな?」
「やだ。先に帰る」
「なんでや!おれらいつでも2人で1つやろ!?」
「そんな、おれの存在が2分の1みたいに言うなよ。失礼なやつだよ」
「は!ご、ごめんな…歩…?」
そんなぼくたちを見て高原は肩をゆすりながらくっくっと笑った。
「いやぁ、ほんまおもろいな、お前ら」
「高原までそんなこと言う」
「ははは、ごめんごめん。…せやったら瀬田くん、サッカー終わるまで俺と勉強でもしよくか」
「え!?ちょっと待てよ、なにその流れ!なんで俺残ること前提で話進んでんの!?」
ぼくはあわてて高原を見る。助けてくれると思ったのに。
秋本は秋本で「高原やったら安心や」と笑った。
「なにそれ」
「ん?いやーねぇ、最近歩背中に悪い虫くっつけとるからな」
「は?」
秋本は真剣な顔でぼくの顔を覗き込む。
「ええか、少しでも危険なことがおきそうやったらいつでも俺に知らせろよ?駆けつけるからな」
「そんなに心配せんでも、俺もいるで、秋本」
「そうやな…せやけどあいつ、思い込んだら一直線みたいなとこあるやろ、なんややけに女々しいっちゅうか」
「最近はそうでも無いんやないか?ゲロゲロ事件からは案外普通やで、彼」
「そうなん?いや〜でもなぁ…」
頭上で会話が展開される。
ただでさえ見上げないと届かない位置で意味の分からない会話をされるのは非常に不愉快だ。
「何の話だよ」
ぼくは下から2人に声を掛ける。
なんでもないで、と秋本は笑った。
高原は相変わらず何も言わずに微笑んでいる。
「気持ち悪りぃ」
「なんや、つわりか?」
「ばか、違うよ。俺のわかんない話されるの、気持ち悪い」
「ああ…いや、ほんまなんでもないねん」
秋本はそう言ってぼくの後ろを見た。
つられてぼくも振り返る。ばっちり来菅と目が合った。
「…なんやねん」
「べっつにぃー」
秋本は意味深にそう呟くとぼくのほうに向き直る。
「ま、そういうことやから歩、今日は一緒に帰りましょっ」
「…なんでそうなるんだよ…」
ばくは机に突っ伏す。もう、秋本には何を言っても無駄だ。
コツン、と座っている椅子に小さな衝撃があって、振り返ると来菅は何事も無かったかのように教科書に目を落としていた。
(…今のって)
ぼくは再び嫌われたのだろうか。なんかもうダブルパンチ。高原は笑っている。

チャイムが鳴って、嵐のような男が隣のクラスへ帰っていった。


(終)



NO TITLE   閏様

俺は認めない。
俺は、俺を、認めない。
らしくもない感情なんか抱いて、格好悪い。
でも、気が付けば、いつも目で追ってしまう。
最初は瀬田だけ見てるつもりだったのに、いつのまにか、近くにいたアイツだけを―――
「―――蓮田!あの変態をどうにかしてくれ!」
「あっゆむーw俺と一緒に素敵なランチタイムを繰り広げ・・・・・・」
「ぎゃー!そんな満面の笑みでこっち来るなー!」
「……安心せい瀬田。アイツはもう助からへん」
「笑ってないで、少しは協力しろよ蓮田!」
―――お前はずっと、そうやって、秋本を見てきたんだよな。
そうやって、楽しそうな顔してるくせに、ああやって熱い視線を送るなんて―――
本当に好きなんだ。
意識した頃には、もう遅いのか。
ふざけんな。
俺とお前は同じかよ、蓮田。
認めても、届かない。
そういう気持ち抱いて、どうかしてる、俺。


(終)



ベイビー君に首ったけ   サラサ様

―或る月曜日、放課後、教室での或るひとコマ。
「…何、してるんや、森口。」
「あっ、うちのことはかまわんでええよ。そう、全ッ然、気にせんでええからね、全然。」
「―暗に“気にしろ”ゆうてないか。」
「やだっ蓮田君たら、うちのこと、気にしたいの。」
「・・寝言は寝て言え。」
「まっ失礼な。そうやね、蓮田君は瀬田君の事が「ちょっと待て」
「何やの、蓮田君。」
「森口、おまえ、何言ってるんや。言っていい冗談と悪い冗談があるで。」
「蓮田君の嘘つき。」
「何が嘘や、ホラ吹いてるんはお前やろ。」
「だって、蓮田君は瀬田君の事が好きなんやろ。蓮田君はやさしいから、言わへんだけで。」
「・・・お前も、瀬田のこと好きやろ。一緒や。」
「ちがう。それと、全然、ちがう。だって蓮田君「森口!!」
「秋本は瀬田のことが好きで、瀬田も、きっと、いや、絶対秋本のことが好きなんや、そして、俺は、二人が好きや。 もう、二度と、そんなこと言うんじゃねぇぞ。」
「・・・馬鹿やね蓮田君」
「あぁ、馬鹿や。国語は、相変わらず苦手やしな。」
―嗚呼、もう!
森口京美は、苛立たしげに窓から空を仰ぐ。
なんて、憎らしい、空の色!
―あのおひめさまも、この空を見ているのだろうか。
あの、サッカー部のエースと共に!

『ベイビー君に首ったけ』


(終)




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